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BLOCH「ETU(エチュ)」トゥシューズとは?ポアントシューフィッターが構造から徹底解説

Noriyuki
著者

Professional Pointe Shoe Fitter

Noriyuki

YGP JapanにてGrishkoフィッターを務め、BLOCH、Grishko、Capezioをはじめとする世界の主要メーカーから直接トレーニングを受けてきた、知識・経験ともに豊富なプロフェッショナルポアントシューフィッター。 Sansha、Gaynor Minden、Gamba、Sylviaなど、各ブランドの設計思想や履き心地の違いにも精通し、 ダンサーひとりひとりの足の形、筋力、踊り方、舞台で求められる表現に合わせた一足を提案している。 なかでも、足のサイズを測ることなく正確なサイズを把握し、短時間で候補を絞り込む “First Look Fitting” を得意とする。 Capezioでのポアントシューズデザイナー兼元プロダンサーのPaul氏から学んだ “3 Minutes Fitting” の思想がある。「限られた時間の中で、的確に本質を見極めるフィッティング」の考え方を土台に、 時間に制約のあるバレエ団やプロダンサーの貴重なリハーサル時間を無駄にしない、実践的で精度の高いフィッティングを大切にしている。 ポアントシューフィッター歴10年。これまでに2万人を超えるバレエダンサーをサポートし、対応履歴は延べ5万件以上。 「足に自然になじむ一足」を大切に、ダンサーが自分らしく表現し、長く踊り続けられる選択に寄り添っている。We fit for the love of dance.

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「ポアントで立った瞬間、軸がふっと逃げる」
「まだ履けそうなのに、先端だけが先にへたってしまう」
「強いシャンクは欲しい。でも、足だけがシューズに置いていかれる感覚は苦手」
「舞台では足先を細くきれいに見せたい。けれど、リハーサルでは安心して立ちたい」

もし、このどれかに少しでも心当たりがあるなら、BLOCHの ETU(エチュ) は一度試す候補に入れてほしいトゥシューズです。

トゥシューズ選びでむずかしいのは、痛みや不安があっても、それを「自分の足が弱いから」「ポアントはそういうものだから」と片づけてしまいやすいところです。

けれどフィッティングで足元を見ていると、原因は足そのものではなく、ボックスの支え方、プラットフォームの広さ、シャンクの返り方が、その人の足と踊り方に合っていないだけという場面が、実は少なくありません。

ETUは、そうした「足先まわりの小さな不安」に、構造そのもので応えようとしている一足です。

先端のボックスまわりには、耐久性のあるポリマー樹脂系素材やクッション構造を取り入れ、汗や湿気で支えが落ちにくい設計に。

一方で、土踏まずを支えるシャンクには、従来のポアントに近い芯材の考え方を残し、足裏のラインに自然になじませていく感覚を大切にしています。

支えがほしい部分は現代的に長持ちさせ、足になじませたい部分はダンサー自身の感覚を残す。この割り切り方が、ETUらしさの出発点です。

履いた印象をひとことで言うなら、「細く見せたい気持ち」と「安心して立ちたい気持ち」のあいだに、静かに橋をかけるようなポアントです。

BLOCH公式では中級者からプロダンサー向けと位置づけられています。実際に手で返しても、足を入れて立っていただいても、シャンクはかなりしっかりしています。

体感としては、BLOCHのSuperlative、あるいはゲイナー・ミンデンのエクストラからハードに近い強さがあります。

そのためETUは、初めてのポアントで「とにかく立ちやすさだけが欲しい」という方より、レッスン量の多い学生、プレプロ、プロダンサー、すでに足の筋力が育っている方ほど良さが出やすいモデルです。

シューズにすべてを預けるというより、育ってきた足の力を、もう一段安定したところへ導く一足。そう考えると、このシューズの輪郭が見えてきます。

また、所感としても、ETUは現在のBLOCHポアントラインナップの中でもトップクラスのサポート力を持つ一足です。

世界で活躍するプロダンサーの中には、表現の繊細さや足さばきのしなやかさを活かしたい舞台ではEuro Stretchを、テクニックの安定感や支えの強さを重視したい演目ではETUを選ぶ、という使い分けをしている方もいます。

どの場面でも無難に使える一足というより、「ここは支えがほしい」と感じる場面で、ぐっと頼もしくなるタイプです。

トゥシューズは、見た目だけでは分からないことがたくさんあります。

同じように見える先端の形でも、立ったときの支え方はまったく違います。シャンクの強さも、ただ硬いかやわらかいかではなく、足裏にどう返ってくるかで印象が変わります。

ETUも、その細かな違いが履き心地に出やすいモデルです。ここからは、ボックス、シャンク、プラットフォーム、足型との相性を順番に見ながら、この一足がどんなダンサーの足元を支えてくれるのかを見ていきましょう。

BLOCH ETUのサイドビュー、プラットフォームの広さとテーパードボックスが分かる斜めアングル

この記事で見ていくこと

公式情報だけでは見えにくい部分も、実際のフィッティングで感じる履き心地や足との相性を交えて見ていきます。

1

ETUがどういう発想で作られたシューズなのか

現代的なボックスと、足裏になじむシャンクのバランス

2

ETUはどんなレベル・どんな足型に合うのか

スクエア型・エジプト型・ギリシャ型との相性

3

シャンク強度の実際(Superlative同等のしっかり感)

プレプロ・プロ、足が強い層にこそ刺さる理由

4

Gaynor Mindenとの違い

類似点と決定的な違い、どちらを選ぶべきか

5

「ETU」と「ETU Flex」の使い分け方

シャンク強度の違いと、どちらが自分に合うか

6

プロダンサーのETU活用事例

表現力重視ではEuro Stretch、テクニック重視ではETUという使い分け

先に結論:ETUは、こんな方に特に試してほしい一足です

すべてのダンサーに無理なくすすめる万能型ではありません。けれど、次の悩みや希望がある方には、かなり深く刺さる可能性があります。

  • 先端のボックスが早くへたり、レッスン後半に立つのが不安になる
  • ポアントで立ったとき、軸が毎回少しずつズレる感覚がある
  • SuperlativeやGaynor Mindenのような、しっかりした支えのあるシューズが好き
  • 足先の痛みや衝撃を少しでもやわらげたい
  • 舞台では足先をすっきり見せつつ、リハーサルでは耐久性も欲しい
  • 自分の足で床を使う感覚は残したまま、先端の支えだけをアップデートしたい

読み進めるうちに、「ETUを試してみたい足なのか」「ETU Flexの方が合いそうか」「別のモデルを見た方がよいのか」が、少し整理しやすくなります。

目次

  1. まず、ETUってどんなトゥシューズ?——支えと感覚のバランス
  2. 用語の整理:「ボックス」「シャンク」「プラットフォーム」って何?
  3. ETUの特徴を、足元の感覚から見ていきます
  4. どんな「困りごと」に向いているのか——フィッターの目線から
  5. ETUの木型は、どんな足型に向いているのか
  6. 知っておきたい「Gaynor Mindenとの比較」
  7. 「ETU」と「ETU Flex」、何が違うの?
  8. こんな方に試してほしいトゥシューズです
  9. まとめ——支えの強さを、足になじむ感覚ごと残した一足

1. まず、ETUってどんなトゥシューズ?——支えと感覚のバランス

ETUを理解するうえで、まず押さえておきたい言葉は 「ハイブリッド」 です。ただしそれは、単に新しい素材を混ぜたという意味ではありません。

最近のトゥシューズ業界では、合成素材や樹脂系のパーツを使った「モダン系」のモデルが増えてきました。

Gaynor Mindenをはじめ、耐久性があり、湿気に左右されにくく、履き心地も安定しやすいトゥシューズは、確かに魅力的です。

長いリハーサルや本番が続くダンサーにとって、支えが急に落ちにくいことは、それだけで大きな安心につながります。

一方で、昔ながらの紙や布、糊で作られた「伝統系」のトゥシューズ(Freed、Grishko、Rクラスなど)には、足になじみ、自分の形に少しずつ育っていく気持ちよさがあります。

履き始めは少しよそよそしくても、レッスンを重ねるうちに土踏まずのラインが出てきて、「自分の靴になってきた」と感じる。

あの感覚は、伝統的なポアントならではの魅力です。伝統系の平均寿命が10時間から20時間とされるのに対し、合成ボックス系のトゥシューズは先端部の耐久性が大きく向上します。

ETUは、この両方の良さを一足の中で使い分けよう、という発想で作られています。見てほしいのは、「どこを現代的にし、どこに従来のポアントらしさを残したのか」という点です。具体的には、

  • ボックス部分(足の指を包む、硬い先端の箱状の部分) には、耐久性のあるポリマー樹脂系素材やクッション構造を取り入れ、先端の支えを長く保ちやすくする
  • シャンク部分(土踏まずを支える、靴底の芯) には、従来のポアントに近い芯材の考え方を残し、足裏やアーチに自然に沿っていく感覚を残す

というように、部位ごとに素材と思想を使い分けています。ここがETUを理解するときに、大事なところです。

先端は現代的に長持ちさせる。けれど、足裏には従来のポアントらしい自然ななじみ方を残す。ETUの個性は、この対比を知ると一気に見えやすくなります。

つまりETUは、「全部を新しくした靴」でも、「伝統のまま固めた靴」でもありません。多くのダンサーが悩んできた「ボックスだけが先に弱ってしまう」という問題を、現代的な素材と設計で見直したトゥシューズです。

BLOCH公式でも、ETUは次のように紹介されています。

「トゥボックスには現代技術の利点を、シャンク(アーチ部分)には伝統的なトゥシューズの利点を持たせた、今までに誰も作ったことのないトゥシューズ」

— BLOCH公式

実際に履いて立ってみると、この「ちょうどいい中間」の意味が少しずつ分かってきます。硬さだけではない。やわらかさだけでもない。支えと感覚のあいだを、かなり細かく狙っている一足です。

2. 用語の整理:「ボックス」「シャンク」「プラットフォーム」って何?

この先を読みやすくするために、トゥシューズの各部位の名前と役割を、まずは短く整理しておきます。(図の番号順ではなく、お話の流れに沿ってご紹介します)

ポアントシューズの構造図。ボックス・プラットフォーム・シャンク・ヴァンプ・クラウン・ドローストリング・アウトソールの7部位を番号付きで紹介
ポアントシューズの構造

2番:ボックス(box)

足の指と中足(ちゅうそく、足の甲の前半分)を包み込む、硬い箱状の部分です。ここの硬さや形が、「立ったときの支え」に直結します。

ETUでまず見たいのは、先端のボックスまわりです。ここには、耐久性のあるポリマー樹脂系素材とクッション構造が取り入れられています。

9番:プラットフォーム(platform)

ボックスの先端、つまりポアントで床に接地する平らな面のことです。ここが広いと、立ったときに「乗る場所」が見つけやすく、安定感が出やすくなります。逆に狭すぎると、細く見えるかわりに、軸の置き場を探すのが少し難しくなります。

4番:シャンク(shank)

靴底の中に入っている、土踏まずを支える芯のことです。ここが硬すぎると立ちにくく、やわらかすぎると支えきれない。

そのバランスが、履き心地を大きく左右します。ETUはここに従来のポアントに近い芯材の考え方を残しているため、足裏や土踏まずのラインに自然になじませていく感覚があります。

シャンク長(3/4、7/8、フル)

シャンクが靴底のどこまで伸びているかを示す表記です。3/4は土踏まず手前まで、フルはかかとまで。

ETUは公式には3/4ですが、3/4より少し高めの位置で折れ、感覚的には7/8に近いと言われています。

数字だけを見ると小さな違いに見えますが、実際に立つと、この折れ位置が安心感に大きく関わってきます。

3番:ヴァンプ(vamp)

足の甲、指の付け根あたりを覆う布地の部分です。長さや形(U字、V字など)によって、指の収まり具合や見え方が変わります。ETUはやや浅めのU字ヴァンプで、足の甲をすっきり見せつつ、指を比較的自由に動かせるデザインです。

クラウン(crown)

ボックスの「高さ」のことです。足の甲が高い方(甲高さん)は、クラウンが低いシューズだと甲が当たって痛くなりやすく、逆に低い方はクラウンが高いとシューズの中で足が浮いてしまいます。

トゥチップ

プラットフォームの先端に貼ってある素材のことです。サテントゥとスエードトゥがあり、グランパドドゥでの取り扱いは日本の仕様に合わせた「サテントゥ」です。

  • スエードトゥ:床との摩擦が大きく、滑りにくい
  • サテントゥ:なめらかで、ロジン(松脂)が効きやすいリノリウム床向き

BLOCHでは環境に応じて、サテントゥ仕様とスエードトゥ仕様があります。

PORONR(ポロン)

ETUに使われているクッション素材の名前です。衝撃を吸収する力が高く、なおかつ静音性にも優れています。ポアントで床に下りたときの「ドン」という音や衝撃をやわらげてくれる素材、とイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。

ダンサーは舞台の上で、足にも体にも大きな負担をかけながら踊っています。だからこそ、衝撃をやわらげてくれる工夫は、長く踊り続けるうえで大切です。

グランパドドゥでも、「ダンサーに好きな踊りを少しでも長く続けてほしい」という思いから、PORONRクッション素材を使用した「ボックス・スペーサー」を自社で企画・生産し、販売しています。

PORONRにもさまざまなグレードがありますが、その中でも最上位の衝撃吸収性に優れ、航空機関連の衝撃吸収部品にも使用される高品質な素材を選びました。

足幅の支えが欲しいときや、指が沈み込みやすいとき、また衝撃を少しでもやわらげたいときに、ぜひ一度お試しください。

用語が少し整理できたところで、ETUの中身を見ていきましょう。

カタログに並ぶ言葉だけでは、トゥシューズの感触はなかなか伝わりません。実際に足を入れたとき、どこが支えてくれて、どこが足に沿ってくるのか。そのあたりを、ひとつずつ確認していきます。

3. ETUの特徴を、足元の感覚から見ていきます

特徴① 耐久性のあるポリマー樹脂系ボックス

ETUでまず見たいのは、先端のボックスまわりです。ここには、耐久性のあるポリマー樹脂系素材とクッション構造が取り入れられています。

従来のトゥシューズでは、紙や布などの素材を専用のペーストで重ねて、つま先のボックスを作るのが一般的です。この製法には、足になじみ、自分の感覚に育っていくような心地よさがあります。履くほどに少しずつ角が取れ、足と靴の距離が縮まっていくような感覚です。

その一方で、汗や湿気の影響を受けやすく、まだ履けるのに先端の支えだけが先に弱ってしまう、という悩みも生まれやすい構造です。レッスンの後半、急にプラットフォームの頼りなさを感じる。そんな経験がある方も多いと思います。

ETUのボックスは、

  • 水や汗の影響を受けにくい
  • 履き始めの支えが長持ちしやすい
  • それでいて、指先の動きや床を感じる感覚は残しやすい

という方向で設計されています。多くのダンサーが抱えてきた「ボックスだけが先にへたる」という問題に、ETUは素材そのものから答えようとしているのです。

特徴② 広めでフラットなプラットフォーム

ETUのプラットフォーム(先端の接地面)は、広めで、ほぼフラットです。これはデザイン上の好みというより、立った瞬間の安心感に関わる実用的なつくりです。

プラットフォームが広いということは、

  • 立ったときの接地面積が大きい
  • 乗せる場所のあそびが広い
  • 軸のブレを吸収しやすい

ということです。ポアントで立ち上がる瞬間に「どこに乗ればいいか」が見つけやすいので、立つたびに位置が微妙にブレやすい方や、軸に不安がある方にとって、とても頼りになる設計です。床に小さく点で乗るというより、面で落ち着く感覚に近いかもしれません。

BLOCHはこれを 「ultra-flat design(超フラット設計)」 と呼び、支持足において「ありえないほど安定する」と表現しています。

BLOCH ETUのプラットフォームを真下から撮影、広めでフラットな接地面
ETUのultra-flat design。広めでフラットな接地面が、軸のブレを吸収してくれる

特徴③ 内側は、意外と「まとまり」を感じる構造

ここがETUの、いちばんユニークで面白いところかもしれません。外から見た印象と、足を入れたときの印象に、少しギャップがあるのです。

外から見ると、プラットフォームが広くて、どちらかというと「ゆったり系」に見えます。でも、ボックスの内側とインソール側には、クッションが何層か重ねられているのです。

この層構造のおかげで、

  • 外側は広くて安定感がある
  • 内側は足先がほどよくまとまり、泳ぎにくい

という、ちょっと不思議な履き心地が生まれます。広いプラットフォームを好むけれど、「中で足が泳いでしまうのは苦手」。そんな方にとって、これはとてもありがたい構造です。

広さ=中で足が動く、ではないということを、ETUは構造で示してくれています。

特徴④ PORONR素材による、静音性と衝撃吸収

ETUには、PORONR(ポロン)という高品質なクッション材が、ボックスの中アーチ(土踏まず)部分の両方に使われています。支えるだけではなく、衝撃を受け止めるための工夫も入っているのです。このおかげで、

  • ポアントで立ち上がるとき、下りるときの音が静か
  • 足にかかる衝撃がやわらかく吸収される

という良さがあります。床が硬いスタジオでのレッスン、何曲も連続で踊るリハーサル、長時間のレッスンなどで、足先にくる「じわじわしたダメージ」を少しでも減らしたい方には、見ておきたいところです。

小さな衝撃の積み重ねは、踊っている本人にしか分からない疲れとして残ります。ETUはそこにも目を向けています。

特徴⑤ 足裏に沿いやすいシャンクと、「7/8寄りの3/4」という絶妙な設計

一方で、シャンク(土踏まず側の芯)には、従来のポアントに近い芯材の考え方が残されています。

これは「足のアーチになじませて、自分の形に調整したい」という、ダンサー本来のニーズに応えるための選択です。合成素材のシャンクは長持ちしますが、反面、「足になじまない」「アーチの高さに合わない」という悩みも生まれがちです。

ETUは、支えの持ちが一番ほしいボックスまわりにはポリマー樹脂系素材やクッション構造を取り入れ、調整したい土踏まず側には、従来のポアントに近い自然ななじみ方を残す、という使い分けをしています。

さらに知っておきたいのは、シャンク長の設計です。

公式カタログ上は3/4シャンクですが、実際には通常の3/4よりもやや高めの位置で折れるため、感覚的には7/8シャンクに近いです。

足裏の途中で急に途切れるというより、土踏まずをもう少し長く支えてくれる印象があります。

そしてもうひとつ、フィッティングで、もうひとつ見ておきたいところがあります。ETUのシャンクの強度は、同じBLOCHの「Superlative」と同等です。

Superlativeは、BLOCHのストレッチ系ラインの中でも、強めのシャンクで知られる中級者からプロ向けモデル。

ゲイナー・ミンデンでいえば、ヨーロッパ製造に切り替わって以降のエクストラからハードに相当する強さです。

これがどう効くかというと、

  • 3/4ほどかかと側が自由ではなく、土踏まず全体をしっかり支えてくれる
  • フルシャンクほど硬すぎず、甲の動きを邪魔しない
  • 結果として「甲は使いたいけれど、落下感は避けたい」方にちょうどいい
  • Superlative同等の強度があるので、長時間のリハーサルでもへたりにくい

という、中間の心地よさが生まれます。「3/4では頼りない、フルでは重い」と感じてきた方、すでに足が十分に発達していて「もう少ししっかり立てるシューズがほしい」と感じているダンサーにとっては、新しい選択肢になります。

特徴⑥ プリーツレス(プリーツなし)構造

トゥシューズの先端を裏から見ると、たいてい細かいヒダ(プリーツ)が寄っています。これは、平らな生地を丸い木型に合わせていくときに、どうしてもできてしまうもの。

ETUは、このプリーツがないプリーツレス構造です。そのため、

  • 先端がすっきり美しく見える
  • 厚みが均一で、立ったときの感触が安定する

という良さがあります。舞台で足先まで見られるダンサーにとっては、地味ですが、大きな仕様です。写真や映像で見返したとき、先端のすっきり感は想像以上に印象を左右します。

従来品ポアントシューズ先端のプリーツ(ヒダ)がある状態
従来品:先端にプリーツ(ヒダ)あり
BLOCH ETUのプリーツレス構造、先端がすっきり美しい
ETU:プリーツレスで先端がすっきり美しい

特徴⑦ しわになりにくい補強サテン

ETUのサテンは、しわになりにくく補強された特別なサテンです。普通のサテンは、履いているうちに足の甲まわりに「くしゃっ」としたシワが寄りがちですが、ETUはそれが起きにくい。足先のラインを、できるだけ静かに、きれいに見せてくれる印象です。

舞台写真や動画で、足のラインをきれいに見せたい方には、大きな助けになります。ほんの少しのシワでも、ライトの下では意外と目に入るものです。

※ ひとつだけ注意点を。補強されているぶん、リボンやゴムを縫いつけるときに針が通しにくいことがあります。縫い針は少し太めで頑丈なものを選びましょう。

特徴⑧ 浅めのU字ヴァンプと、エラスティックドローストリング

ETUのヴァンプ(甲の部分)は、やや浅めのU字型です。V字ほど鋭く見せるのではなく、足の甲をやわらかく、すっきり見せる印象があります。指を比較的動かしやすい形になっているところも、ETUらしい部分です。

そして、シューズの履き口にはゴム入りのドローストリング(絞りひも)が付いています。これを締めることで、かかとや甲の抜けを抑えられるので、フィット感を自分で微調整できます。足に吸いつくような感覚を、最後のひと絞りで整えられる仕様です。

特徴⑨ 「スプリングローデッド」な立ち上がり感覚

BLOCHはETUの独特な履き心地を 「spring-loaded sensation(ばね仕掛けのような感覚)」 と表現しています。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、実際に立つと、この言葉の意味がなんとなく分かります。

これは、合成素材ボックスとPORONRクッション、そしてやや高めに折れる伝統シャンクの組み合わせから生まれる、ポアントで立ち上がるときにシューズが軽く反発してサポートしてくれるような感触のこと。

すでに履いていただいている方からも「立ち上がりやすい」、フィッティング時点でも「軽く押し上げられる感じがする」という声をいただくことがあります。これがまさに、ETUのスプリングローデッド感覚!

他のモデルにはあまりない独特の感覚なので、一度体験していただくと、ETUというシューズの個性がよく分かります。単に硬いシューズではなく、押し返してくれるような支え方をする。その違いは、足を入れるとかなり印象に残ります。

特徴⑩ スエードトゥとサテントゥ

ETUは、プラットフォームの素材が2種類あります。踊る床や使う環境によって、足先の安心感が変わる部分です。

  • スエードトゥ
    ロジン(松脂)の使用が制限されているスタジオや、少し滑りやすい床で踊る方向け。先端が床に食いつきやすく、回転や立ち上がりで「逃げない」感覚が得やすいです。
  • サテントゥ
    ロジンを使える、リノリウム床向け。見た目の美しさを優先したい舞台用にも向いています。

細部に宿る、世界のダンサーとの共同開発

ここまで主要な10の特徴をご紹介してきましたが、ETUは世界中で活躍するバレエダンサーと意見を交わしながら開発された背景もあり、目立たない細部にも「快適に、静かに、長く踊る」ための工夫が重ねられています。

こうした細部は、商品写真だけではなかなか伝わりません。けれど、実際に踊る人にとっては、最後の安心感を支えてくれる部分です。

とくに注目しているのが、以下のような細部の仕様です。

  • Relevease® インソール:BLOCH独自のインソール設計。ルルベからポアントへの移行を滑らかに誘導してくれる仕様
  • マイクロファイバーアウトソール:革より軽量で、適度な摩擦を持ちながらも床への適応がよいモダンな素材
  • プラットフォーム:フラットで角のある形状が、かがり縫いをしたときに近い安定感をもたらす
  • ボックス内部の追加レイヤー:外側は広めのプラットフォーム、内側はまとまり感のある二層構造
  • トゥまわりの保護パッド+パッド入りインソール:足先の当たりをやわらげる三重の仕組み
  • PORONRクッション:ボックス内部とアーチ部分の両方に配置、衝撃吸収と静音性を両立
  • プリーツレス構造:先端のヒダがなく、デュミからポアントへの移行もごろつきにくく、見た目も美しい
  • 補強サテン:しわになりにくく、舞台写真での見映えを維持

一つひとつは地味な要素かもしれませんが、これらが合わさって「立ったときの静けさ」「長時間履いても疲れにくい快適性」「舞台での美しさ」というETUの良さになりますね。

基本仕様|サイズ展開と価格感

2026年時点で、ETUは以下のサイズ・幅で展開されています。

  • サイズ:3から8
  • :X、XX、XXX(1X・2X・3X)の3種類

ここで知っておくと便利なのは、ETUは他のBLOCHポアントと比べて、全体的にサイズがやや小さめに出る傾向があること。

普段お履きのBLOCHサテン系モデルからは半サイズから1サイズ大きめを、ストレッチサテン系モデルからは同じサイズを目安に試すと、ちょうど良いケースが多いです。

フィッティングでのサイズ事例

  • バランスヨーロピアン(Balance European)5.5XXX の方 → ETUでは 6.5XX が合った(1サイズアップ・幅は少し細く)
  • エレガンス 3.5X の方 → ETUでは 4XX が合った(ジュニアで成長のためサイズアップ・幅は少し広く)
  • スーパーラティブ 5.5XX の方 → ETUでは 5.5XX が合った(同サイズ・同幅)
  • スーパーラティブ 5X の方 → ETUでは 5X が合った(同サイズ・同幅)
  • カーチャ 4XXX の方 → ETUでは 4.5XX が合った(メーカー表記の違い・同幅)
  • スターポアント 6XXX の方 → ETUでは 6.5XX が合った(メーカー表記の違い・同幅)
  • スターポアント 5X の方 → ETUでは 5X が合った(元のシューズが緩かった可能性・幅は規格上わずかに広め)
  • 2007 4.5XXX の方 → ETUでは 5XX が合った(メーカー表記の違い・同幅)
  • Maya I(マヤ1)4XX の方 → ETUでは 4.5XX が合った(メーカー表記の違い・同幅)
  • フェッテ 5XX の方 → ETUでは 5.5XX が合った(メーカー表記の違い・同幅)

同じBLOCHラインでも、どのモデルから移行するかでサイズ変化の傾向が違うのは、ヒールの収まりや履き口のフィット感にも個人差がありますので、可能な限りフィッティングでお試しいただくことをおすすめします。

価格はグランパドドゥでは17,820円(税込)、BLOCH米国公式では151ドル(約24,160円・2026年4月時点の換算)です。従来のBLOCHポアントより少し高めですが、耐久性とクッション性を考えると、実質コストではむしろお得、という見方もできます。

4. どんな「困りごと」に向いているのか——フィッターの目線から

ここからは、ETUの特徴を「どの悩みに効くのか」という切り口で整理していきます。カタログの仕様だけでは見えにくい部分を、実際の足元の感覚に置き換えて見ていきましょう。

トゥシューズの説明は、素材名や構造だけを見ると少し難しく感じます。けれど実際に大切なのは、その構造が、立つとき・下りるとき・回るときに、ダンサーの不安をどう減らしてくれるのかです。

日々のフィッティングでも、ここからご紹介する悩みは本当によく聞きます。「軸が怖い」「ボックスだけ先に潰れる」「足先が痛い」「音が気になる」。ETUは、そのひとつひとつに対して、素材や形の面からかなりはっきりした答えを持っているシューズです。

困りごと① ポアントで立つと、軸がブレて怖い

ポアントで立ち上がるたびに足首が揺れる、乗る場所が毎回違うように感じる、上に引き上がる前に「怖さ」が先に来てしまう——。こうしたタイプの悩みは、プラットフォームが狭すぎる・先端が丸いことで起きやすい傾向があります。

ETUの広めでフラットなプラットフォームは、この悩みに対してとても頼りになります。接地面が広いぶん、乗る位置のあそびが大きく、余計な力みが抜けやすい。立った瞬間に床を探しに行かなくていい感覚は、舞台でもレッスンでも大きな安心材料です。

困りごと② ボックスだけが先にへたる

「シャンクはまだ硬いのに、先端だけ『ぐにゃっ』とつぶれる」
「指先が前に落ちる感覚になって、立ちづらくなる。というより、もう痛い」
「レッスン3から4回で、もう先端が不安になる」

こうした悩みは、とくにレッスン回数が多く、しっかり踏み込めるプレプロ層や、足の力が十分発達したダンサーからよく聞きます。

足が強いからこそ、シューズへの負荷も大きくなり、先端が真っ先に壊れる。そんな経験を繰り返してきたダンサーにとって、ETUの合成素材ボックスはかなり現実的な助けになります。

1足あたりの実用時間が伸びれば、結果的にコストパフォーマンスの面でも選びやすくなります。

困りごと③ 足先が痛い、当たりが強い

  • 親指の先がいつもつらい
  • 人差し指に圧が集中して、だんだん爪が黒くなる
  • 長いレッスンのあと、指先が麻痺したようになる

こうした「足先まわりの痛み」は、多くのダンサーにとって切実な悩みです。

ETUは、

  • ボックスの内側にクッションが重ねてある
  • インソール(中敷き)にもパッドが入っている
  • PORONR素材が衝撃を吸収する

という三重の仕組みで、足先にかかる負担を少しでもやわらげようとしています。大切なのは、「硬さで押し返す」タイプの靴ではなく、「負担の質を変える」タイプのトゥシューズ、ということです。

どんな足にも無条件で痛くないわけではありませんが、同じ練習量でも「じわじわ来る疲れ方」が変わってくる可能性があります。

困りごと④ ポアントの音が気になる

意外と声が多いのがこの悩みです。「自分だけ、ポアントの音が大きい気がする」というもの。

コンクールや発表会の静かなヴァリエーションでは、足音ひとつが印象を左右します。ETUはPORONR素材のおかげで静音性が高めなので、音が気になる方にも安心しておすすめできます。

5. ETUの木型は、どんな足型に向いているのか

ETUを検討するうえで、一番大事なのはここです。どれだけ機能が魅力的でも、木型が足に合わなければ、その良さは十分に出ません。

BLOCH公式の販売店資料と、実際のフィッティングで感じた印象をもとに、ETUがどんな足型に合いやすいのか、逆に慎重に見たい足型はどこかを整理していきます。

まず、大前提として

ETUは次のように位置づけられています。

「中級者からプロダンサー向けに設計されたモデル。とくに、親指・人差し指・中指の3本の長さがほぼ揃っていて、中足(指の付け根)が一直線に近い スクエア型の足 に適している」

— BLOCH公式

足型の相性を考えるうえではとても大切な出発点になります。

一方で、ETUの木型は 「curved and tapered last(カーブドテーパー木型)」 とも説明されています。これは「足のカーブに沿い、先端に向かってなだらかに絞られている木型」という意味。

言葉だけ見ると「スクエア型」と「テーパー」は矛盾しそうですが、ETUの場合は外側のプラットフォームが広く、内側のクッションで絞って支えるという特殊な構造のおかげで、両立しています。

また、海外のポアントシューフィッター(The Cinnamon Tree)は、ETUのボックス形状についてこのように語っています。

「BLOCHは箱型として知られているが、ETUは違う。ボックスはやや先細りで、メタタルサル(中足)のあたりで広くなる」

— The Cinnamon Tree(2023年10月)

従来のBLOCHの「箱っぽい」印象を嫌っていた方でも、ETUは試す価値がある、ということです。

その通りで、私の中でもGrishkoの発想にある木型「スマートポアント」シリーズや、ゲイナー・ミンデンのスカルプテッドフィットまできついカーブはないものの、近いシルエットだと思っています。

足型との相性を、ひとつずつ見ていきましょう

スクエア型の足の解剖図。親指・人差し指・中指の3本がほぼ同じ長さで、指の付け根が一直線に近い足型
スクエア型
(BLOCH公式推奨)
エジプト型の足の解剖図。親指が最も長く、小指に向かって階段状になだらかに短くなる日本人に多い足型
エジプト型
(日本人に多い)
ギリシャ型の足の解剖図。人差し指が最も長く、山型に突出している足型
ギリシャ型
(フィッティングで要確認)

スクエア型(公式に推奨されている足型)

親指・人差し指・中指のおよそ3本が同じくらいの長さで、指の付け根も一直線に近い——いわゆるスクエア型の方。この足型は、

  • 先端のどこに乗っても力が均等に分散されやすい
  • 広いプラットフォームが、そのまま「支え」として機能する
  • ETUの内側クッション構造が、足先を過不足なく受け止めてくれる

という点で、ETUと非常に相性がいいと考えられます。これまで、スクエア型の方が「幅が合うシューズを探すのが難しい」と感じていた場合、ETUはとても有力な候補になります。

エジプト型

親指がいちばん長く、小指に向かってなだらかに短くなっていく、日本人にも多い足型です。エジプト型の方にとっては、

  • ETUのテーパー感(先端に向かって絞られる形)が、指のライン自体にはなじみやすい
  • ただし、広いプラットフォームに対して、親指1本で立つ感覚になりやすい場面もある
  • その点を、内側のクッションと補強が受け止めてくれる

という関係になります。「エジプト型には絶対合わない」ということはなく、むしろフィット次第では美しく履けるモデルです。ただし、親指に圧が集中しやすいタイプの方は、フィッティング時に「親指先の当たり方」を必ず確認したいところです。

ギリシャ型

人差し指がいちばん長い足型です。ギリシャ型の方は、本来は「人差し指が収まるだけの長さと形」を持つ木型が必要になります。ETUは木型そのものは比較的テーパーしているので、

  • 人差し指の長さが「軽度」なギリシャ型であれば、内側クッションで受け止められて合いやすい
  • 一方、人差し指がかなり長いタイプの方は、実際に履いて人差し指の先がボックス内で詰まらないかを慎重に確認する必要があります

という見方になります。

ひとこと
足型の相性は、モデル名だけで一概に決まるものではなく、実際に足を入れてみて初めて分かる部分がとても大きいです。最後に決め手になるのは、ダンサー自身がこれまで培ってきたフィーリング。サイズ・幅・厚みが数値のうえで完璧でも、このフィーリングが伴わなければ、それは「合っていない」ということになります。この記事はあくまで「そもそもETUがどういう設計思想で作られているか」を知っていただくためのものとお考えください。最終的な判断は、必ずフィッターとの相談のなかで決めていきましょう。

アーチとの相性

ETUはPORONRのクッション性と、従来のポアントに近い芯材のシャンクを組み合わせた設計なので、

  • アーチが高めの方(甲が出やすい、リフトが強い方)には、アーチが伸びる動きにきれいに沿います
  • アーチが中程度からやや低めの方も、従来のポアントに近い芯材シャンクのおかげで、履き込むうちに自分のアーチ形状になじんでいきます

「甲はあまり高くないけれど、きれいに使いたい」という方にも、シャンクの調整しやすさの点でおすすめしやすいモデルです。

6. 知っておきたい「Gaynor Mindenとの比較」

ETUの話をすると、かなり高い確率で比較対象に出てくるのが Gaynor Minden(ゲイナー・ミンデン) です。

どちらも「現代的な素材」「耐久性」「快適性」という文脈で語られやすいシューズですが、履き味は同じではありません。ここを混同すると、選び方を間違えやすくなります。

この章では、ETUとGaynor Mindenを単純な優劣ではなく、どんなダンサーにどちらの思想が合いやすいかという視点で比べていきます。

Gaynor Mindenとは

ゲイナー・ミンデンは、ポアントシューズの世界では「モダン系」の代表格。合成ポリマー素材を使ったシャンクとボックスが特徴で、伝統的なポアントの3から4倍長持ちすることで知られています。

快適性の高さも業界随一とされ、プロのダンサーからも愛用者が多い一方、「シューズが仕事をしすぎて、足が弱る」という批判もあり、議論の分かれるブランドでもあります。

ETUとGaynor Mindenの似ている点

海外のフィッターによる複数のレビュー(The Cinnamon Treeなど)でも語られています。

「ETUは旧USA製造のGaynor Mindenと非常に比較できる。サテンはGaynorに似ており、全体構造はUSA製Gaynor Mindenとほぼ同一。快適性もGaynor Mindenレベルで、これまで無敵だったGaynorの快適性に匹敵する」

— The Cinnamon Tree(2023年10月)

つまり、ETUは「Gaynor Mindenに近い快適性と構造を、伝統的な履き心地の範囲で実現した」 ということです。これは、ETUの立ち位置を理解するうえで、とても大事な視点になります。

ETUとGaynor Minden 早わかり比較表

項目 BLOCH ETU Gaynor Minden
ボックス素材 合成ポリマー 合成ポリマー
シャンク素材 従来のポアントに近い芯材 合成ポリマー
慣らし シャンクを慣らせる ほぼ不要
足への「仕事」 残す 軽減される
寿命目安 伝統系より長い 伝統系の3から4倍
価格感 17,820円(税込) 23,500円

どちらを選ぶべきか

ここは、ダンサーの考え方と練習スタイルによって分かれるところです。

  • 足をしっかり使って、自分の形に慣らしていきたい → ETU
  • 快適性と寿命を最優先したい、慣らしの手間を省きたい → Gaynor Minden
  • Gaynor Mindenの快適性に憧れるが、伝統的な履き心地も手放したくない → ETUが最も現実的な選択肢

つまりETUは、「Gaynor Mindenのいいところを取り入れつつ、足の仕事も残したい」というダンサーのための、一歩踏み込んだハイブリッド なのです。この視点で見ると、ETUの存在意義がより鮮明に見えてきます。

7. 「ETU」と「ETU Flex」、何が違うの?

ETUには、通常のETUETU Flex という2つのシャンク強度があります。

名前だけ見ると「Flexの方がやさしそう」と感じるかもしれませんが、選び方は単純ではありません。大切なのは、足の強さだけでなく、レッスン量、踊る演目、今まで履いてきたシューズ、そして「どこまでシューズに支えてほしいか」です。

ここでは、どちらを選べばよいか迷ったときの判断軸として整理します。

ETU(通常版)

  • シャンクの強度:ハード/ミディアムからハード寄り
  • しっかりした支えがほしい、プレプロ/上級ダンサー向け
  • 長時間のリハーサルでも、シャンクがへたりにくい

ETU Flex

  • シャンクの強度:ソフト/ミディアム
  • Relevease® 設計を再エンジニアリングし、従来のポアントに近い芯材を使いながら、より高い柔軟性を提供
  • ポアントでのサポートは維持しつつ、甲を押し出す動き・ルルベからポアントへの移行を柔らかく感じたい方向け
  • Flexは特に「引き上げる動きを、シューズに邪魔されたくない」というダンサーに好まれます

選び方としては、

  • 強くしっかり立ちたい・足の力があるタイプ → 通常のETU
  • 柔らかく甲を使いたい・足に優しい支えがほしい → ETU Flex

というのが、ざっくりとした目安です。実際はフィッティング時に両方を試して選ぶのがいちばんです。現時点ではETU Flexの入荷は行っていませんが、今後をお楽しみに。

8. こんな方に試してほしいトゥシューズです

ここまで見てきた特徴をふまえると、ETUは「誰でも履きやすい万能モデル」というより、悩みがはっきりしている方ほど良さが分かりやすいモデルです。特に、次のような方には一度試していただきたいです。

強く試してほしい方

まず、ETUを心から「この方にこそ履いていただきたい」と感じる、明確な対象層からお伝えします。

  • 週3から7回のレッスンをこなし、シューズの耐久性とサポート力をどちらも求めているプレプロ層・コンクール出場者
  • プロ、セミプロとして活動しており、公演シーズンや長時間のリハーサルにも耐えられるしっかりしたシャンクを求めている方
  • すでに足の筋力が十分に育っていて、今のシューズに対して「もう少ししっかり立てるシャンクがほしい」と感じている方
  • 現在 BLOCH Superlative、バランスヨーロピアン Strong、Heritage Strongなど、強めシャンクのモデルを履いていて、さらにボックスの耐久性も高めたい方
  • 足先の力が強く、ボックスが先にへたりやすいため、1足あたりの消耗の早さが気になっている方
  • ポアントでの軸のブレに悩んでおり、広めでフラットなプラットフォームによる安定感を求めている方
  • ポアントの着地音が気になり、静音性を重視したい中級者からプロ、コンクール出場者
  • Gaynor Mindenに興味はあるけれど、足の使い方まで変えたくはないと思っている方

フィッティングで丁寧に見たい方

一方で、ETUは特徴がはっきりしているシューズだからこそ、足型や好みによって印象が分かれます。次のような方は、フィッティングで細かく確認しながら選びたいモデルです。

  • かなり強いギリシャ型で、人差し指の長さが特に際立つ方
    → 人差し指のおさまりや圧のかかり方は、必ず実物で確認したいところです
  • 小さく華奢な足で、極端にコンパクトなシルエットを好む方
    → ETUは広めのプラットフォームを持つため、見え方の好みが分かれる可能性があります
  • 素足に近い軽さを最優先したい方
    → PORONRやクッション構造のぶん、わずかに「しっかりした感触」があります。この感覚を心地よいと感じるか、重さとして感じるかは好みによります

ETUを別の選択肢も見たい方

反対に、ETUははっきりと個性のあるシューズだからこそ、次のような方には、より扱いやすい別モデルを試してほしいと感じます。無理に強いシューズを選ぶより、今の足に合う一足を選ぶ方が、結果的に上達も早くなります。

  • ポアントを始めたばかりの方(ファーストポアント)
    → ETUはシャンクがかなりしっかりしているため、足の力で十分に使いこなすのが難しい場合があります
  • 週1から2回程度のレッスンで、足首や足まわりの強さにまだ不安がある方
    → シャンクの硬さによって、かかとが浮いたり脱げやすく感じたりする可能性があります
  • 足の筋力がまだ発達途中の方
    → 硬めのシャンクを活かしきれず、かえって足に余計な負担がかかることがあります
  • 久しぶりにバレエを再開したばかりの方
    → まずはもう少し柔らかめのモデルで感覚を取り戻してから、必要に応じてステップアップするのが選びやすいです

ポアントは「合わないモデルを頑張って履く」より、「今の自分の足に合うモデル」を選ぶほうが、上達への近道です。気になる方はフィッティングでご相談くださいね。

BLOCH ETUのよくある質問

ポアントシューフィッターとして日々いただく、ETUに関するご質問にお答えします。

ETUは初めてのポアントでも履けますか?

Noriyuki

Professional Pointe Shoe Fitter

Noriyuki

ETUは中級者からプロダンサー向けのモデルのため、初めてのポアントとしてはおすすめしていません。シャンクがしっかりしているぶん、足の筋力が十分に育っていない段階では曲げきれず、かえって負担になってしまう可能性があります。

初めての方には、シルビア、チャコットをはじめ、Grishkoではノービス、ストリームポアント、BLOCHのHeritageやAmelie Softなど、もう少し扱いやすい柔らかめのモデルから始めるのが選びやすいです。ポアントは「合わないモデルを頑張って履く」よりも、「今の足に合うモデルを選ぶ」ことのほうが、結果として上達への近道になります。

ETUの慣らし(ブレイクイン)はどれくらい必要ですか?

Noriyuki

Professional Pointe Shoe Fitter

Noriyuki

伝統系ポアントと同様、約8時間から10時間の慣らしがひとつの目安です。合成ボックスはしっかりしていますが、履き込むうちに足になじみ、従来のポアントに近い芯材のシャンクもアーチに沿って少しずつ変化していきます。

新品を初日から本格的なレッスンで使うのではなく、まずはスタジオ内でのウォームアップや短時間のエクササイズから少しずつ慣らしていくのが選びやすいです。焦らず、足とシューズがなじんでいく時間を大切にしてください。

公演を控えたプロの方であれば、日々のレッスンの中で事前に慣らしを進めやすく、ボックスの持ちの良さを活かしながら、シャンクもご自身の足に合わせてしっかりなじませていきやすいモデルだと思います。

サイズが分からない場合、どうすればいいですか?

Noriyuki

Professional Pointe Shoe Fitter

Noriyuki

ETUは他のBLOCHポアントと比べると、サイズがやや小さめに感じられる傾向があります。目安としては、普段のBLOCHのサイズより半サイズから1サイズ大きめを試してみると合わせやすいです。

ストレッチサテン系モデルでは、同じサイズでよい傾向です。

実際のフィッティングでも、バランスヨーロピアンで5.5XXXを履く方がETUでは6.5XXまたは6XXXSuperlativeで5.5XXを履く方がETUでも5.5XXで合ったケースがあります。

足型や甲の高さ、ヒールのおさまりには個人差が出やすいため、できる限りフィッティングで実物を履いて確認していただくのが選びやすいです。

ETUは静音性が高く、長持ちしやすいのですか?

Noriyuki

Professional Pointe Shoe Fitter

Noriyuki

静音性については、実際に高い設計です。PORONRクッションがボックス内部とアーチ部分の両方に使われており、プリーツレス構造も相まって、ポアントで立ち上がる瞬間や下りる瞬間の着地音がやわらぎます。コンクールや発表会など、静かなヴァリエーションを踊る場面では、特に頼りになるところです。

長持ち感についても、従来のBLOCHポアントより向上している印象があります。ボックス部分に現代的な素材を使っているため、先端だけが早くへたりやすい、いわゆる「ボックス負け」が起きにくい設計です。

特に公演を控えたプロの方であれば、日々のレッスンやリハーサルの中であらかじめシューズを慣らしていきやすく、ボックスの持ちの良さを活かしながら、シャンクもご自身の足に合わせてしっかりなじませていきやすい一足だと思います。本番までに状態を整えやすいという点でも、安心感につながりやすいモデルです。

ただし、最終的な消耗の進み方は 足の力・レッスン頻度・床の素材・個人のクセ によって変わりますので、あくまで個人差があることは前提にしていただければと思います。

プロダンサーはETUをどう使っていますか?

Noriyuki

Professional Pointe Shoe Fitter

Noriyuki

プロに限らず皆さん、舞台や演目によってポアントを使い分けることは珍しくありません。実際にお話ししたプロダンサーの方の中にも、足との一体感やしなやかな見え方を重視したい場面ではEuro Stretchを、安定感や支えの強さを優先したい場面ではETUを選ぶ、という使い分けをされている方がいました。

ETUは、BLOCHラインナップの中でもサポート力の高い一足です。静音性や衝撃吸収性に加え、広くフラットなプラットフォームによる安定感もあるため、軸の確かさや支えの強さが特に求められる場面で選ばれやすい印象があります。

一方で、Euro Stretchは足への追従性が高く、よりしなやかな足さばきや一体感を引き出しやすいモデルです。「万能の一足」を探すというより、役柄や踊りの要求に合わせて自身の魅力を引き出せる視点が、ETUを最大限に活かすコツかもしれません。

9. まとめ——支えの強さを、足になじむ感覚ごと残した一足

最後に、ETUというトゥシューズをひとことでまとめるなら、私はこう表現します。

ボックスは頼もしく、
シャンクは足になじむ。
強さと感覚のあいだに立つ、
BLOCHらしいハイブリッドポアント。

ETUは、けっして「誰にでも合う万能な一足」ではありません。むしろ特徴がはっきりしているからこそ、合う方には深く刺さり、合わない方には少し強く感じる可能性があります。

ここを曖昧にしないことが、ETUを紹介するときにいちばん大切だと思っています。

ただ、フィッターとして改めてお伝えしたいのは、ETUは、現在のBLOCHラインナップの中でもトップクラスのサポート力を持つポアントだということです。

特に、先端の安定感、ボックスの耐久性、衝撃吸収、強めのシャンクを求める方にとっては、かなり魅力的な選択肢になります。

たとえば、こんな方は一度試してみる価値があります。

  • レッスン量が多く、先端が早くへたりやすい
  • ポアントで立った瞬間、軸の不安を感じる
  • すでに足の筋力が育っていて、もう少し頼れるシャンクがほしい
  • BLOCH Superlative、バランスヨーロピアン Strong、Gaynor Mindenの強めシャンクに近い支えが好き
  • 足先の痛みや、床に下りたときの衝撃を少しでもやわらげたい
  • 舞台ではすっきりした足先を見せたいけれど、レッスンでは安心感も欲しい
  • Gaynor Mindenの快適性に興味はあるけれど、自分の足で床を使う感覚も大切にしたい

反対に、初めてのポアントでまだ足づくりの途中の方、かなり柔らかいシャンクを好む方、軽さを最優先したい方は、ETUよりも別のモデルやETU Flexの方が合う場合があります。

トゥシューズ選びで大切なのは、「人気があるか」ではなく、今の足に合っていて、これからの踊りを助けてくれるかです。ETUがその答えになる方もいれば、ETU Flexや、まったく別の一足が答えになる方もいます。

もしこの記事を読んで、少しでも「私の悩みに近いかもしれない」と感じたら、ぜひ実際に足を入れてみてください。画面上の説明だけでは分からない、立ち上がった瞬間の安心感、シャンクが返ってくる感覚、足先がボックスの中でどうまとまるかがあります。

一足一足、ダンサーの足に寄り添って

ETUは、従来のBLOCHモデルとはサイズ感が異なる場合があります。特に、ボックスのまとまり方、プラットフォームの広さ、シャンクの強さは、足を入れて立ってみないと分かりにくい部分です。

「私にはETUが合うのか」「ETU Flexの方がいいのか」「そもそも別のモデルを選ぶべきなのか」まで含めて、足型・レベル・踊り方を見ながらご提案します。迷ったまま選ぶより、一度足を入れて確かめる方がずっと早いことも多いです。

もちろん、ETUが難しそうだと感じた方も安心してください。グランパドドゥでは、BLOCHだけでなく、Grishko、Gaynor Minden、Gamba、Sylviaなど、幅広いブランドを取り扱っています。

強いシューズを選ぶことが正解なのではなく、今のあなたの足に無理なく合い、これからの踊りを支えてくれる一足を見つけることが大切です。一緒に、焦らず探していきましょう。

あなたのダンスライフが、
長く、少しでも軽やかになりますように。

AUTHOR

Noriyuki 岩内のりゆき プロフィール写真

この記事を書いた人

NORIYUKI

Professional Pointe Shoe Fitter

「足に自然になじむ一足」を大切に、ダンサーが自分らしく表現し、踊り続けられる選択に寄り添うプロフェッショナルポアントシューフィッター。海外老舗のBLOCH、Grishko、Capezioの各ブランドで専門的なフィッティング講習を修め、Sansha、Gaynor Minden、Gamba、Sylviaのトゥシューズにも精通する。

Youth Grand Prix Japan(YGP Japan)にGrishko代表ポアントシューフィッターとして参加。フィッター歴10年、予約制のフィッティングで2万人以上のバレエダンサーをサポートし、対応履歴は延べ5万件を優に超える。ひとりひとりの足の形、踊りのスタイル、これから描くダンサー人生に合わせ、最適な一足を提案している。

We fit for the love of dance.

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